2001年12月県議会      表紙に戻る

村岡キミ子県議の一般質問(12月11日)

【医療問題について】

村岡 政府与党は、十一月二十九日「医療制度改革大綱」をまとめ、次の通常国会に上程する。その内容は、サラリーマンや公務員など労働者本人の患者負担を現行二割から三割に引き上げ、毎月の保険料も値上げする、また高齢者医療の対象を現行の七十歳以上から七十五歳以上に遅らせる、というあらゆる階層・年代に「痛み」を押しつけるきわめてひどい改革案である。実施時期は二〇〇三年としているが、サラリーマン本人負担については「必要な時」に引き上げるとしている。小泉首相は二〇〇三年中に実施する意向を示している。また、七〇歳から七四歳は一割負担となり、一定所得のある人は二割負担となる。負担増になることに変わりはない。

 この改悪案は、国が医療費を負担する責任を放棄し、患者や被保険者の国民にだけ痛みを押しつけるというところに問題がある。一九九六年の健保本人負担が一割から二割に引き上げられた時から受診は減少している。有訴率は年々増加しているが、通院率は急激に減少している。我慢率は九八年には三〇%に増加している。

 高齢者においても、例えば慢性呼吸不全の九十歳の女性で、在宅治療のため月二回の往診で、今までは定額千六百円だったのが、一割定率となると一万二千三百二十円(七.七倍)になる。胃ガンで末期自宅療養中の男性の場合、今までは三千二百円だったのが四万二百円(十二.六倍)になる。それに介護保険によるサービスを受ければ多額の費用となり、少ない年金では安心して医療を受けられなくなるのは明らかである。

 景気が悪化し、失業やリストラで嵐が吹いている今こそ、社会保障制度の役割は大きい。財政的にも強化しなければならない。経済的理由による治療中断や受診抑制、国保料滞納によって資格証明書が発行されたり、短期保険証の期限が切れたり事態は深刻である。

 相次ぐ医療改悪で患者負担増は限界にある。県下の患者、県民の現状をどのように認識しているのか。また、国保料の滞納者がリストラ、倒産、失業などで増加している中で、資格証明書のために安心して受診できない人がいる。実態にあった納付相談は重要であり、保険証の取り上げはやめるべきである。そして、県は国に対して医療保険改悪をとりやめるよう求めることを強く訴える。

■ 白井福祉保健部長 県は特に低所得者への配慮、地方財政への配慮が十分なされるよう、再三にわたり国に対し要望を行っている。国保滞納者等への資格証明書の交付に先立ち、 十分な納付相談の機会を確保し、特別の事情の有無を十分把握し対応するよう指導している。今後とも、安易な取り扱いとならない様十分市町村を指導していく。

 

(再質問)

村岡 八三年に老人医療費の有料化が始まったが、このときの国の医療費への国庫負担は四四.九%だった。〇一年度予算では、三一.九%に削減されている。また中小企業に働いている政府管掌の健保本人を見てみると、九四年には一六.四%から一三%に削減されている。だから今の医療費負担を引き上げないためには、国が憲法に定める、国民の命を守り増進させるという責任を果たすべく、国庫負担率をもとに戻すことがまず行われるべきである。国の法律ではあるが、県民生活に直結する重要な問題であると認識されているのならば、ぜひ国への働きかけ、そして県民の声・実態の把握に努めていただきたい。

■ 白井福祉保健部長 何といっても改革の中心課題は、今後とも持続可能な皆保険制度をいかにつくっていけるか、また構築できるかということにある。この問題は国民生活に直結する重要問題なので、様々な観点から、当然真剣な議論がなされると考えている。県としては、低所得者への配慮等、国へ働きかける姿勢は今後とも変わらない。

 表紙に戻る

【男女共同参画推進条例制定について】

村岡 男女共同参画社会基本法は、一九七五年の「国際婦人年」以来の男女平等を求める世界と日本との運動の流れの中でつくられたものである。この四半世紀「平等、開発、平和」を共通テーマに、世界でも日本でも女性たちのさまざまな運動が広がった。そんな中で、男女平等を進めていく基本法が一九九九年六月制定、施行。そして二〇〇〇年十二月、基本法に基づく基本計画が策定されたところである。

 政府は法の前文に男女共同参画社会の実現を二十一世紀の日本社会を決定する最重要課題と位置づけ、積極的姿勢を表明している。特に基本法が国と共に都道府県に基本計画策定の義務を、市町村には努力義務を課している。すでに十六都道府県で条例が制定されており、本県においても来年二月の定例議会に提案すべく、作業中と聞いている。とりわけ基本計画は、二〇一〇年までの基本方向と二〇〇五年までの具体的施策の実施計画を求めているところである。

 年々女性労働者の比率が大きくなり、現在では四割を超えている。農村や商工自営業においては、働き手の主体は女性たちである。しかし働く女性労働者の昇進、昇格、賃金などにおける差別扱いは放置され、女子学生に対する採用差別、女性パート労働者の無権利状態も横行している。結婚退職制なども少なくなったとはいえ、強要する企業もある。そんな中、やむにやまれず是正を求めて裁判に訴えている女性たちもあとをたたない。

 育児、介護休業法の制定、DV防止法の成立、施行について、これらを実効あるものにするため計画に盛り込み、制度をさらに充実させることを望む。

 県は、条例に反映させるための県民の声、特に農業、自営業に携わる女性の実態を把握し、その実態に基づいて施策を進めることが重要と考えるが、それらをどのような方法で聴取したのか。また、県民からの相談窓口は男女共生社会推進センター一箇所に限定せず、本県の地理的条件に見合った専門職の配置を求めるが県の考えはどうなのか。

 また、審議会委員のうち少なくとも五人は公募にすること、委員会の構成を男女同数にすることも求める。

 さらに、女性労働者の昇進、昇格、賃金格差は放置できない問題であるにもかかわらず、基本法には事業主、企業の責務が明記されていない。条例に盛り込むことを強く求める。

■ 秋月環境生活部長 男女共生社会づくり協議会において、本年六月下旬から県内四箇所で県民の意見を聞き、十月中旬にはこれらの意見を取りまとめた論点整理集を作成し、再度県内四箇所で公聴会を開催した。並行して市町村、商工関係団体、農林水産関係団体等への意見照会や県民の友等による広報を通じ、郵便、ファクス、電子メールでも意見募集をおこない、のべ三百人以上から意見をいただいた。関係部局とも協議しつつ、実効性ある計画づくりを目指していきたい。

 同協議会からも相談員の設置について提言があり、それをできる限り尊重していきたい。併せて、各振興局においても男女共生の観点から相談に対応できるような体制づくりも検討していきたい。また企業や事業主の責務も条例に採り入れたい。

 審議会委員の公募制については、委員数の男女同数と併せ、運用面で検討していきたい。

  表紙に戻る

【中小企業対策について】

村岡 九月議会において、商工労働部長は、「緊急雇用経済対策会議の機構を充実させること」、そして「活動内容も県民の切実な要望に迅速に応えられるよう活性化すること」を「頑張る」と答弁されたが、これまでどのような対策をとり、体制はどう強化したのか。またどのような課題を議論しどのような方向をだしたのか具体的に示していただきたい。

昨年度実施された金融安定化特別保証制度は県下でも一万件を超えて適用され、多くの中小企業者から歓迎されたが、この制度は今年三月でうち切られた。この制度を再開し、新規貸し付けを含め返済猶予や借りかえなどの措置ができるよう便宜をはかれるよう国に要望するとともに、県としても然るべき制度を設けていただきたい。

 ベンチャー支援資金融資の適用範囲を、既存企業内でのベンチャー事業にまで拡大していただきたい。また、経済情勢がきびしい現在においては、制度融資にあたって保証人をたてること自体が困難になっている。経営内容が健全に進むという展望をもてる企業であれば、制度融資を第三者保証なしでも受けられるよう、条件の緩和を求める。

 二〇〇二年度からペイオフが実施されるが、中小零細企業にとっては死活問題ともなる制度融資のための預託制度は継続されることを求める。同時に東京、大阪など八大都道府県が国に対してペイオフ実施にあたっても預託金の全額保護を求めたということだが、本県もまた然るべき要望を行われたい。

■ 内田商工労働部長 本年十月十七日に「和歌山県景気・雇用対策本部幹事会」を開催し、企業等へのヒアリング調査を行い、各部局への効果的な施策をとりまとめた。十一月二十 七日に「和歌山県景気・雇用対策本部」を開催し、緊急雇用創出、再就職対策と失業者の生活安定、緊急経済対策等の施策を講じていくことを決定した。これを受け、今議会において雇用・中小企業対策関連として五十四億五千万円の補正予算を提案し、公共事業にお ける土木建築資材等の県産品活用促進行動を決定し、来月中の制度実施を目指している。今後、これらの施策を迅速に実施し、平成十四年度当初予算編成においても引き続き効果的な景気・雇用対策を積極的に検討する。

 県は、本年十月から不況対策特別資金の借換制度を創設している。今議会には景気・雇用対策本部で決定した緊急経済対策として、平成十三年度、十四年度に返済期限の到来する一部の運転資金について、最大二年間の期間延長を行う措置等を求めている。

  創造的な事業活動を行う中小企業者等が、県の認定を受けた事業計画に基づき新技術・新商品の開発をする時には補助金や低利の融資等で支援を行っており、現在まで六十一件の計画を認定している。県のベンチャー企業支援金は平成八年度に創設し、総額六十億円の融資枠に対し四十九件、約十三億円の融資を行った。この資金は商品開発や技術開発を行う場合にも、その事業計画が知事の認定を受けた場合には融資対象となる。今後も事業の周知など積極的に取り組む。県は、小規模事業者を対象とした「特別小口融資資金制度」「新規開業支援資金B型制度」で無担保かつ無保証人の制度を既に実施している。今議会においても融資限度額の引き上げを求めている。また信用保証協会でも保証人の弾力的な取り扱いを行っている。ペイオフ凍結解除後の制度融資の預託金については、預託制度、利子補給方式等種々の方策について検討を行っている。県の融資制度を引き続き安全で効率的に運用出来るよう他府県の動向、「県ペイオフ対策研究会」の情報を得ながら検討していきたい。国への要望は、他府県と連携し、全国知事会で同趣旨の要望を行ったところである。

 表紙に戻る

【住友金属の人減らし「合理化」について】

村岡 和歌山県地評が今年三月から専任の相談員をおいて実施している労働相談では、十一月末までに百四件の相談があり、そのうち三割強が、解雇と退職強要に関するものと聞いている。解雇に関する相談は十一月だけでそれまでの一ヶ月平均の三倍にのぼる。商工労働部長は、本県の失業率は近畿ブロックの六.五%を上回るのではと言っていたが、そうした中での住友金属の人減らしと、労働条件の切り下げで、和歌山の雇用情勢をますます悪化させることが懸念される。

 住友金属は、定年前退職勧奨を五十九歳の労働者千二百人を対象に、昨年七月からすすめている。すでに九百八十人を超える労働者がこれに応じたと聞くが、これは定年については六十歳を下回ることはできないと定めている高齢者雇用安定法に違反している。会社は退職を断る労働者に何度も退職を迫る人権無視の面接を強要している。労働者からは「定年まで働けると信じて生活設計を立ててきたのに、裏切られた思いだ」という声が聞かれる。退職勧奨は来年三月まで続けられるとのこと。行政の対応は緊急の問題である。

 入社して間もない二十歳代の人も含め、出向者全員を解雇し、現在の六割から八割の賃金で出向先に転籍させるという計画に対し、不安と憤りの声が上がっている。転籍は、労働者の同意がなければできないことは、労働基準法や民法にてらせば明らかなので、会社は面接によって執拗に同意を求めている。

 県はこうした「合理化」の実態、労働者や家族の苦悩を承知しているのか。雇用・景気対策本部でヒアリングを行うなど実態を把握すべきではないか。また、こうした人減らし「合理化」については事前の県との協議を義務づける条例制定などが必要ではないか。

 住友金属は企業も地域もともに発展をという旗印で企業活動を行ってきたはずだ。大企業としての社会的責任を果たすべきだ。労働者のくらしと地域経済に多大な影響を与える今のやり方を中止するように求めるとともに、国にも必要な指導を求めるべきではないか。明確な決意と実行を求める。

■ 木村知事 住金の大規模な合理化については現在実態把握に努めている。転籍や退職の勧奨等は本来企業の判断で労働関係法規を遵守しつつ行われるべきもので、条例の制定にはなじまないが、県としては必要があれば会社に対し要請を行うこともやぶさかではない。また、県による様々な雇用対策についても主要な企業と連携をとりつつ実効性あるものにしていきたい。企業のとっている措置において法律上問題があれば、当然、労働局等で必要な指導を行っていくものである。

表紙に戻る